広告の規制に関する法令にはどのようなものがある? 規制に対応する際の注意点とは
企業において商品・サービスの情報を消費者に届けるには、広告の活用が欠かせません。
しかし、広告の内容を、事実に反したものや誇張したものにしていると、消費者が行う適正な商品・サービスの選択が妨げられる可能性もあります。そこで、消費者を保護するために、各種法令によって広告の規制が設けられています。
企業のマーケティング部門や広報部門の担当者のなかには、「広告の規制に関する法令にはどのようなものがあるのか」「広告の規制にはどのように対応すればよいのか」などと気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、広告の規制について、関連する法令や対応する際の注意点を解説します。
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目次[非表示]
- 1.広告の規制に関する法令
- 2.広告規制に対応する際の注意点
- 2.1.ガイドラインに沿って審査を行う
- 2.2.業界の自主規制について確認しておく
- 2.3.リスクは僅かであっても避ける
- 3.まとめ
広告の規制に関する法令
広告の規制に関する法令としては、『不当景品類及び不当表示防止法』(以下、景品表示法)や『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』(以下、薬機法)などが挙げられます。また、屋外における広告の設置に関して規制を行う『屋外広告物法』もあります。
出典:e-Gov法令検索『不当景品類及び不当表示防止法』『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』『屋外広告物法』
景品表示法
景品表示法の第5条では、消費者に誤認させる表示を含む広告が規制されています。
▼景品表示法第5条
(不当な表示の禁止)
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
引用元:e-Gov法令検索『不当景品類及び不当表示防止法』
景品表示法第5条1号と2号に規定される表示はそれぞれ優良誤認・有利誤認と呼ばれ、実際よりも著しく優良もしくは有利だと消費者に誤認させる広告がこれらの規制の対象となります。
▼優良誤認・有利誤認の例
表示 |
具体例 |
優良誤認 |
カシミヤの混用率が80%のセーターを“カシミヤ100%”と広告する |
有利誤認 |
競合他社と同程度の内容量を持つ商品を“2倍の容量”と広告する |
また、景品表示法5条3号で規制されるそのほかの広告の例としては、不動産のおとり広告や、広告だと分からない形で広告を行うステルスマーケティングなどが挙げられます。
出典:e-Gov法令検索『不当景品類及び不当表示防止法』
薬機法
薬機法では、医薬品に関する虚偽・誇大な広告や特定の医薬品の広告などが規制されています。
▼薬機法第66条・67条・68条
(誇大広告等)
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
(特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限)
第六十七条 政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
2 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
引用元:e-Gov法令検索『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』
薬機法第66条では、虚偽・誇大な広告のほか、医師が保証したと誤解を与えるおそれがある広告も規制の対象となります。
また、高度な専門性が要求される特殊疾病の医薬品については、医療関係者以外を対象とする広告が薬機法第67条によって規制されます。
さらに、薬機法第68条では、承認前の医薬品・医療機器などについての広告に規制が設けられています。
出典:e-Gov法令検索『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』
薬機法については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
屋外広告物法
屋外広告物法では、常時または一定の期間継続して屋外で公衆に表示される広告物について、都道府県ごとに条例で規制できると規定しています。
▼屋外広告物法第3条
(広告物の表示等の禁止)
第三条 都道府県は、条例で定めるところにより、良好な景観又は風致を維持するために必要があると認めるときは、次に掲げる地域又は場所について、広告物の表示又は掲出物件の設置を禁止することができる。
引用元:e-Gov法令検索『屋外広告物法』
屋外広告物法の対象となる広告物としては、以下が挙げられます。
▼屋外広告物の例
- 看板
- 立看板
- はり紙・はり札
- 広告塔
- 広告板 など
出典:e-Gov法令検索『屋外広告物法』
広告規制に対応する際の注意点
広告の出稿を行う際に広告規制に対応するには、ガイドラインや業界の自主規制について確認する必要があります。また、リスクを避けることも重要です。
ガイドラインに沿って審査を行う
広告規制に関する各種法令には、法律の趣旨・規定を分かりやすく説明するためのガイドラインが用意されています。
ガイドラインを活用することで、自社の広告内容が適法かどうかを判断しやすくなります。
▼広告規制に関するガイドラインの例
法令 |
対応するガイドライン |
景品表示法 |
不実証広告ガイドライン、価格表示ガイドライン、比較広告ガイドライン |
薬機法 |
医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン |
また、消費者庁では景品表示法に関する各種ガイドラインのほか、ステルスマーケティングに関するガイドブックや、おとり広告に関する運用基準なども公開しています。
なお、広告のガイドラインについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
業界の自主規制について確認しておく
法令による広告規制とは別に、業界ごとに自主規制を設けているケースがあります。
▼広告表現の自主規制がある業界の例
- 化粧品業界
- 酒類業界
- たばこ業界
- 不動産業界 など
広告を出稿する際は、自社が提供する商品・サービスの分野について自主規制がないかを確認しておくことが必要です。
リスクは僅かであっても避ける
広告の表現については、僅かなリスクも避けることが重要です。
広告に法令違反があると、消費者の誤認を招いてトラブルにつながったり、法的に罰せられたりする可能性が生じます。出稿する広告の審査は保守的な視点で行い、少しでも法令に触れそうな表現は避ける必要があります。
まとめ
この記事では、広告の規制について以下の内容を解説しました。
- 広告の規制に関する法令
- 広告規制に対応する際の注意点
広告の規制に関する法令には、景品表示法や薬機法、屋外広告物法などがあります。広告の出稿を行う際は、これらの法令に触れないようにガイドラインを確認するほか、業界の自主規制にも対応してリスクを避けることが重要となります。
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