広告出稿で遵守する薬機法の3つの規制と違反リスク
広告を出稿する際、必ず考えなければならないこととして薬機法があります。
広告の審査による掲載可否は媒体によって基準が異なるため、「効果があるような表現を使いたい」「薬機法に抵触しないような表現を使いたい」と、広告主と媒体側で要望が噛み合わないことも少なくありません。
そのため、両者の妥協点を見い出して掲載基準を決める必要があります。
本記事では、薬機法における広告規制の要件や、違反した場合の罰則などを解説します。
目次[非表示]
- 1.薬機法とは
- 2.薬機法の広告規制
- 2.1.①虚偽・誇大広告の禁止
- 2.2.②特定疾病用医薬品等の広告の制限
- 2.3.③未承認医薬品等の広告の禁止
- 3.薬機法に違反した場合のリスク
- 4.まとめ
薬機法とは
薬機法とは、医療品や医薬部外品、化粧品などの製造や販売へのルールを定めて、保健衛生の向上を目的とした法律です。
薬機法の前は“薬事法”と呼ばれており、2014年11月25日に施行された薬事法等の一部を改正する法律によって、『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』に名称が変更されました。通称“薬機法”と呼ばれています。
以下に該当する商品の製造・販売事業者は、薬機法を遵守しなければなりません。
▼薬機法で製造や販売が定められている項目
項目 |
具体例 |
医薬品 |
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医薬部外品 |
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化粧品 |
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医療機器 |
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再生医療等製品 |
|
また、以下で挙げる3つの要件すべてに該当する場合は、広告扱いとなります。
▼薬機法における広告として該当する3要件
- 顧客を誘引する ((顧客の購入意 欲を昂進させる))意図が明確であること
- 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
- 一般人が認知できる状態であること
引用元:厚生労働省『薬事法における医薬品等の広告の該当性について』
出典:厚生労働省『薬事法における医薬品等の広告の該当性について』『薬事法等の一部を改正する法律の概要(平成25年法律第84号)』『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第二項第三号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する医薬部外品』
薬機法の広告規制
医薬品等の広告規制には、大きく分けて3つの禁止事項があります。ここでは、薬機法の条文とともに3つの規制内容を解説します。
①虚偽・誇大広告の禁止
第66条では、虚偽や誇大な記事を広告として流布することを禁止しています。
▼薬機法 第66条
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
引用元:e-Gov法令検索『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』
主に医薬品や医薬部外品などの名称や製造方法、効能、効果など、消費者が勘違いしてしまうような誇大広告を規制する旨の記載があります。
“何人も”と記載されているとおり、対象者は広告主だけでなく、以下も含まれます。
- 広告代理店
- 医薬品の製造・販売事業者
- 広告を掲載する媒体メディア
- インフルエンサー
- ライター など
また、特に注意しなければならないのが健康食品です。健康食品は医薬品に該当しない一般食品のため、効能・効果を表示できません。
画像引用元:消費者庁『機能性表示食品」制度がはじまります!』
ただし、特定保健用食品や栄養機能食品など、医薬品には含まれないものの、効果の表示が認められている食品もあります。
出典:e-Gov法令検索『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』/厚生労働省『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の概要』/消費者庁『機能性表示食品」制度がはじまります!』
②特定疾病用医薬品等の広告の制限
第67条では、特定の内容に関わる広告を制限しています。
▼薬機法 第67条
政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品又は再生医療等製品を指定し、その医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品又は再生医療等製品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
2 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。
引用元:e-Gov法令検索『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』
特殊疾病に関する医薬品については、高度な専門知識を必要とするため、医療関係者以外の一般人への広告は制限されています。
出典:e-Gov法令検索『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』/厚生労働省『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の概要』
③未承認医薬品等の広告の禁止
第68条では、承認前の医薬品や医療機器、再生医療等製品などの製造方法、効能、効果に関する広告が禁止されています。
▼薬機法 第68条
何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
引用元:e-Gov法令検索『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』
承認前の場合、申請した内容がそのまま承認されるか分からないため、虚偽・誇大広告にならないようにする意図があります。
出典:e-Gov法令検索『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』/厚生労働省『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の概要』
薬機法に違反した場合のリスク
薬機法に違反した場合には罰則・課徴金制度が定められています。行政指導が行われるほか、悪質な行為の場合には懲役もしくは罰金が科されます。
例えば、第66条の“虚偽・誇大広告の禁止”に違反した際は、第75条の5の2で課徴金の支払いについて記載されています。また、第85条で“2年以下の懲役、もしくは200万円以下の罰金が科される”と示されています。
▼薬機法 第75条の5の2
第六十六条第一項の規定に違反する行為(以下「課徴金対象行為」という。)をした者(以下「課徴金対象行為者」という。)があるときは、厚生労働大臣は、当該課徴金対象行為者に対し、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額(次条及び第七十五条の五の五第八項において「対価合計額」という。)に百分の四・五を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』
課徴金を支払う場合は、違反を行った期間中の対象商品の“売上額×4.5%”を納付しなければなりません。課徴金納付の対象となるのは、医薬品や医療機器等の名称、製造方法、効能・効果、性能に関する虚偽、誇大な広告の行為です。
出典:厚生労働省『課徴金制度の導入について』/e-Gov法令検索『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』
まとめ
この記事では、薬機法における広告規制について以下の内容を解説しました。
- 薬機法とは
- 薬機法における広告規制
- 薬機法に違反した場合のリスク
薬機法では、保健衛生の向上を目的として、医療品等の製造や販売へのルールを定めており、広告にも規制の要件が定められています。
広告を出稿する際は、規制の要件を理解して薬機法を遵守した広告作成が必要です。また、薬機法だけの遵守だけでなく、ターゲットを惹きつけるデザインやキャッチコピー、広告媒体の選定なども重要です。
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なお、マス広告とデジタル広告の違いについては、以下の記事で解説しています。