
テレビCMの考査とは?広告を出すために定められている基準を解説
テレビCMを作るためには、考査という一定の基準を満たさなくてはなりません。テレビCMに信頼性が生まれるのはこのためで、他の広告メディアと比べてテレビ広告を出す企業側も、テレビ広告の内容も一定の基準を満たすかどうかの考査を受けたものが放映されています。
今回は、そんなテレビCMの考査についてご紹介します。
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- 1.テレビCMの考査とは
- 2.テレビCMの考査は2種類
- 3.テレビCMの考査はなぜ必要?
- 4.考査にはどのくらいの期間がかかる?
- 5.まとめ
テレビCMの考査とは
テレビCMの考査とは、CMを放映する前に内容をチェックすることで、取り扱う商品やサービスの種類と、CM内で使われている表現が「日本民間放送連盟」の定める基準(民放連放送基準)を満たしているかどうか確認するものです。では、具体的にどんなチェックが行われるのでしょうか。まずは考査が必要な理由と、その基準について解説します。
テレビCMはなぜ考査が必要なの?
テレビ放送は政府の許可を得て行う「許可事業」のため、国民にとって役立つ正確な情報を届けることが求められています。これはCMでも同様で、表現の正確性、倫理観、放映する企業が正しいサービス・事業を行っているかどうかなどについて一定の基準をクリアしなくてはなりません。つまり、考査を受けなければテレビCMを放送できないのです。
考査は、実際にそのテレビCMを放映するテレビ局が行います。法律に違反しないか、放送の基準に合っているか、消費者からのクレームはないかなどの観点から考査を行いますが、テレビ局によっては、第三者機関に調査を依頼することもあります。
テレビCMの考査に使われる「放送基準」とは
CM放送に限らず、テレビ・ラジオを通じたすべての放送は「日本民間放送連盟」が定める放送基準を満たさなくてはなりません。(全文はこちら)
細かく定められていますが、基本的に以下の5つの点を重視して作られています。
1:正確で迅速な報道
引用:日本民間放送連盟 放送基準 前文より
2:健全な娯楽
3:教育・教養の進展
4:児童および青少年に与える影響
5:節度をまもり、真実を伝える広告
特にテレビCMに関係するのは、「節度をまもり、真実を伝える広告」の部分です。例えば、以下のような基準があります。
・事実を誇張し、視聴者に過大評価させるものは取り扱わない
引用:日本放送連盟 放送基準より抜粋
・製品やサービスなどについての虚偽の証言や、使用した者の実際の見解でないもの、証言者の明らかでないものは取り扱わない
・風紀上好ましくない商品やサービス、および性具に関する広告は取り扱わない
・統計・専門術語・文献などを引用して、実際以上に科学的と思わせるおそれのある表現をしてはならない
また、医療法や薬事法で厳密に規定される医療・医薬品・化粧品、金銭取引に直接関係する金融・不動産については別途、章を分けてさらに厳格な基準が設けられています。このように、テレビやラジオは公共放送であるがゆえの放送基準が設けられているため、信頼性も保たれていると言えるでしょう。
テレビCMの考査は2種類

テレビCMの考査には、大まかに分けて2種類があります。企業そのものについての「業態考査」と、CMの内容についての「CM表現考査」です。
業態考査:企業そのものについての考査
CM出稿する企業自体について見られるもので、テレビ局によって異なりますが、基本的に以下のようなものが必要です。
- 会社概要:パンフレット、ホームページなど業務内容全般を確認できるもの
- 履歴事項全部証明書:法的な登記等を確認する書類。発行後2ヶ月以内のもの
- 連絡先:担当者の名刺など
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商品・サービス:商品の現品・説明書など
また、民放連の基準により、以下のような業種は取り扱えないことが決められています。
- 許可・認可を要する業種で、許可・認可のない企業
- 個人情報を調査・収集・利用するもの(探偵業や興信所など)
- 占い、心霊術、骨相・手相・人相の鑑定その他、迷信を肯定したり科学を否定したりするもの
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権利関係や取引の実態が不明確なもの(マルチ商法、キャッチセールスなど)
このため、探偵業や興信所、占いや手相鑑定などは、どんなに会社自体の運営が健全であっても、テレビCMを放送することはできません。
このように、広告主の「業種」「商法」「商品」の3つのポイントが審査されるのが、業態考査です。
CM表現考査:CMの内容についての考査
テレビCM映像自体の、放送する内容や表現に関する考査です。これも必要な資料はテレビ局によって異なりますが、主に以下のようなものが必要とされます。
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CMストーリー
いわゆる絵コンテ。資料保存のため、電子ファイル化されたものが一般的
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根拠資料
広告表現に関わる調査・分析結果など
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キャンペーン内容、価格表など
関係法令や業界基準に抵触しないか
民放連の放送基準のほか、景品表示法、特定商取引法、薬機法、健康増進法、食品表示法、宅地建物取引業法などさまざまな法に照らし合わせ、抵触しないかどうかチェックされます。また、各種業界の自主基準や公正競争規約があれば、それに沿った表現かどうかも確認されます。
他にも、公序良俗に反する性的・暴力的な表現、見た人の誤解を招くような表現は放送できません。
見た人の誤解を招くような表現とは、例えば薬機法に引っかかるような「絶対に効果が出る」などの表現が当てはまります。「世界初」「日本最大」などの最大級表現を使う場合も、根拠がはっきりと示せる場合でなければ、まず考査を通ることはできません。
テレビCMは広告放送のため、射幸心を煽るために商品やサービスをよく見せたいものですが、表現方法には十分に注意しましょう。
テレビCMの考査はなぜ必要?

考査があるのは、テレビというメディアが社会的な信頼を保ち、公権力に干渉の口実を与えないためです。基本理念は民放連の「広告は真実を伝え、視聴者に利益をもたらすものでなければならない」とする、視聴者・消費者保護の観点に基づいています。
テレビが信頼のおけないメディアとなると、誤った商品情報が流されたり、企業にとって不利益な情報を意図的に隠して視聴者に誤解されたりするリスクが高まります。また、公権力の干渉を受けると、番組における表現の自由が制限されたり、正しい報道がされなかったりする可能性もあるでしょう。
このように、テレビCMの考査は放送の自主性を維持するためにも、広告媒体としての価値を落とさないためにも重要なのです。
考査にはどのくらいの期間がかかる?
一般的に、業態考査には2週間〜3ヶ月程度、表現考査には1週間〜1ヶ月程度かかります。
例えば、その放送局で初めてテレビCMを放映するという場合は、業態考査をするのに3ヶ月程度かかる場合もあります。これは、企業の健全性や信頼性を判断するのに時間がかかるためです。一方で、表現考査は放送倫理や法令・基準が決まっており、CM素材の内容だけを見て判断すれば良いため、業態考査よりは短めの期間で判断しやすいのです。
まとめ
テレビCMを作るためには、「業態考査」と「CM表現考査」という2つの考査を突破しなくてはなりません。日本民間放送連盟が定めた放送基準で、特にテレビCMは「節度をまもり、真実を伝える広告」でなくてはなららないとされています。考査があるからこそ、視聴者を保護し、かつ、社会的な信頼性が得られるのがテレビCMなのです。