テレビCMの考査とは?広告の出稿における基準を解説
※2024年7月2日更新
テレビCMを作るためには、考査という一定の基準を満たさなくてはなりません。考査によって、出稿する企業と広告の内容がともに一定の基準を満たすと判断されたテレビCMのみが放映されています。
テレビCMの出稿を検討している企業の担当者のなかには、「テレビCMの考査を受ける際にどのような資料を用意すればよいのか」「考査の評価基準を知りたい」などと気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、テレビCMの考査について、概要や提出資料、評価基準、判断に必要な期間を解説します。
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テレビCMの考査とは
テレビCMの考査とは、CMを放映する前に内容をチェックすることです。基本的にそのテレビCMを放映するテレビ局が行いますが、テレビ局によっては、第三者機関に調査を依頼することもあります。
考査では、取り扱う商品やサービスの種類を含む広告主の業態と、CM内で使われている表現が日本民間放送連盟(以下、民放連)の定める基準を満たしているかどうかを確認します。この際、広告主をチェックする考査は“業態考査”、CMの内容をチェックする考査は“CM表現考査”と呼ばれます。
テレビCMの考査を行う目的
テレビCMの考査を行う目的は、以下のとおりです。
▼テレビCMの考査を行う目的
- 視聴者・消費者を保護する
- メディアとしてのテレビの社会的な信頼性を保つ
- 放送の自主性を維持する など
テレビ放送は政府の許可を得て行う許可事業のため、国民にとって役立つ正確な情報を届ける必要があります。これはCMも同様で、表現の正確性や倫理観、放映する企業が正しいサービス・事業を行っているかどうかなどについて一定の基準をクリアしなくてはなりません。
質の低い情報を放送してしまった場合、メディアとしてのテレビの信頼性が損なわれてしまうと考えられます。また、信頼性を失うことで外部からの規制が厳しくなり、放送の自主性を維持することが難しくなる可能性もあります。
業態考査の提出資料と評価基準
業態考査では、広告主となる企業そのものについて、健全性や信頼性の確認を行います。
提出資料
業態考査における提出資料はテレビ局によって異なりますが、主に以下の資料が必要です。
▼業態考査における主な提出資料
資料 |
概要 |
企業概要 |
パンフレット、ホームページなど業務内容全般を確認できるもの |
履歴事項全部証明書 |
法的な登記を含む会社情報を確認する書類。 |
連絡先 |
担当者の名刺 |
商品・サービス |
商品の現品、サービスの説明書 など |
CM表現に関する資料 |
CM表現の根拠資料、関連法令・業界自主規制などで確認が必要な |
企業の業務内容や法的な書類のほか、CM表現に関する資料も業態調査の段階から必要です。また、テレビ局によっては業態考査の時点でCMの絵コンテを求められるケースもあります。
評価基準
業態検査では企業の業種や事業内容を基に、テレビCMの出稿を受け入れるかどうかを判断します。
民放連の基準によると、以下に該当する企業のテレビCMは取り扱えないものとされています。
▼テレビCMを取り扱えない企業・業種
- 許可・認可を要する業種で、許可・認可のない企業
- 探偵業や興信所など、個人情報を調査・収集・利用する業種
- 占い、心霊術、骨相・手相・人相の鑑定など、迷信を肯定したり科学を否定したりする業種
- マルチ商法やキャッチセールスなど、権利関係や取引の実態が不明確な企業
探偵業や興信所、占いや手相鑑定などは、どんなに会社自体の運営が健全であっても、テレビCMを放送することはできません。
一方で、業種に問題がない企業であっても、消費者庁に何度もクレームを受けているような場合には、業態考査を通らない可能性があります。
CM表現考査の提出資料と評価基準
CM表現考査では、CMの内容について不適切な表現が含まれていないかを判断します。
提出資料
CM表現考査の際に必要な資料はテレビ局によって異なりますが、主に以下のとおりです。
▼CM表現考査における主な提出資料
資料 |
概要 |
CMの内容を示す資料 |
電子化された絵コンテ、動画素材 など |
CM表現の根拠資料 |
CM表現に関わる調査・分析結果 |
商品のセールスに関する資料 |
キャンペーン内容、価格表 など |
CM表現考査においては、CMの内容とその根拠を示す資料が必要です。また、キャンペーン内容や価格などが関係法令や業界基準に抵触しないかについても確認されます。
評価基準
CM表現考査では、CMの表現内容が民放連の放送基準や各種法令に抵触しないかを確認されます。
▼テレビCMに関する民放連の放送基準の例
(100) 事実を誇張して視聴者に過大評価させるものは取り扱わない。
(102) 製品やサービスなどについての虚偽の証言や、使用した者の実際の見解でないもの、証言者の明らかでないものは取り扱わない。
(110) 風紀上好ましくない商品やサービス、および性具に関する広告は取り扱わない。
(127) 統計・学術用語・文献などを引用して、実際以上に科学的と思わせるおそれのある表現をしてはならない
引用元:一般社団法人 日本民間放送連盟『放送基準』より抜粋
▼CM表現考査の際に参照される主な法令
- 景品表示法
- 特定商取引法
- 薬機法
- 健康増進法
- 食品表示法
- 宅地建物取引業法 など
公序良俗に反する性的・暴力的な表現のほか、見た人の誤解を招くような表現も放送できません。“世界初”や“日本最大”などの最大級表現を使う場合は、根拠をはっきりと示す必要があります。
また、各種業界の自主基準や公正競争規約があれば、それに沿った表現かどうかも確認されます。
なお、テレビCMの表現に関するルールについては此方の記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
出典:一般社団法人 日本民間放送連盟『放送基準』
考査にはどのくらいの期間がかかる?
考査にかかる期間は、業態考査とCM表現考査で異なります。一般的な目安は以下のとおりです。
▼考査にかかる期間の目安
考査の種類 |
期間 |
業態考査 |
2週間〜3ヶ月程度 |
CM表現考査 |
1週間〜1ヶ月程度 |
例えば、その放送局で初めてテレビCMを放映する場合、業態考査をするために3ヶ月程度かかる場合があります。これは、企業の健全性や信頼性を判断するのに時間がかかるためです。
一方で、表現考査は放送倫理や法令・基準が決まっており、CM素材の内容だけを見て判断すればよいため、業態考査よりは短めの期間で判断しやすいといえます。
まとめ
この記事では、テレビCMの考査について以下の内容を解説しました。
- テレビCMの考査に関する概要
- テレビCMの考査を行う目的
- 業態考査の提出資料と評価基準
- CM表現考査の提出資料と評価基準
- 考査にかかる期間
テレビCMの考査とは、CMを放映する前にテレビ局側で広告主や広告内容について確認を行うことです。テレビ局はテレビCMの考査を行うことで放送の質を維持して、視聴者・消費者を保護したり、テレビの社会的な信頼性を保ったりしています。また、放送の自主性を維持するためにも考査は重要と考えられています。
広告主をチェックする考査は業態考査、CMの内容をチェックする考査はCM表現考査と呼ばれ、それぞれ提出資料と評価基準が定められています。これらの考査を通過しなければテレビCMを放映することはできません。
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